ひき逃げ事故などで加害者が特定できないとき、
政府が被害者を救済する「政府保障事業」とは?
万が一「ひき逃げ事故」の被害に遭い、加害者が見つからない場合は、ケガの治療費などは自分で負担するしかないのでしょうか。被害者救済を目的とした「政府保障事業」について、その内容や注意点について解説します。
加害者に賠償請求できない場合の被害者救済制度「政府保障事業」とは?
政府保障事業とは、政府が自動車事故の被害者の損害をてん補する、最低限の補償制度です。
自動車事故の被害者になった場合、通常は加害者が加入している自動車保険から、損害賠償金の支払いを受けることになります。ところが、事故を起こした車がそのまま逃走してしまった「ひき逃げ事故」や盗難車で事故を起こして加害者が逃げた場合などでは、加害者の自動車保険から損害賠償金を受け取ることができません。
このようなケースでも、被害者が自分で自動車保険(任意保険)に加入していれば、保険金を受け取ることができる場合があります。過失割合に関係なく、実際に発生した損害額に対する保険金が支払われる「人身傷害補償保険」のほか、任意保険の対人賠償保険に加入していない車や、運転者が特定できない車との事故で受けた損害を補償する「無保険車傷害保険(特約)」から、保険金の支払いを受けることができます。
ただし、全ての自動車保険(任意保険)加入者が、事前にこれらの保険に加入しているとは限りません。そこで、加害者が特定できない場合や、加害者の自賠責保険から保険金の支払いを受けることができない場合に、被害者を救済する目的で設けられているのが、「政府保障事業」制度です。これは、政府が自動車損害賠償保障法(自賠責法)に基づき、被害者が受けた損害をてん補するものです。
政府保障事業では、政府は被害者が加害者に対して有する損害賠償請求権を代位取得し、加害者に対して求償を行います。加害者が弁済しない場合には、国が加害者を相手に提訴し、裁判所の判決に従って、加害者が所持している自動車、土地や建物、給与等について差し押さえを実施して回収する流れになります。
加害者に賠償を求められない事故のなかでも、典型例はひき逃げ事故です。では、毎年どのくらいのひき逃げ事故が発生しているでしょうか。法務省が報告する2015年版の「犯罪白書」によると、ひき逃げ事故は2004年をピークに2005年から減少が続いているものの、2014年は年間で9,231件と、9,000件を超えるひき逃げ事故が発生していることがわかります。(※1)
てん補の範囲や限度額は?保障内容の紹介
政府保障事業の保障内容
てん補される損害の範囲や限度額は、自賠責保険の基準に準じています。被害の状況により、以下のように傷害、後遺障害、死亡に区分されます。
| 傷害 |
|---|
| 治療関係費、休業損害、慰謝料、文書料が支払われる。車両の損害など物損は対象外。 法定限度額120万円。 |
| 後遺障害 |
| 身体に残った障害の程度に応じた等級によって、逸失利益(事故がなければ将来的に得られたであろう利益)と慰謝料が支払われる。 法定限度額75万円から4,000万円。 |
| 死亡 |
| 葬儀費、逸失利益、被害者本人および遺族の慰謝料が支払われる。 法定限度額3,000万円。 |
社会保険からの給付を受ける場合
健康保険や労災保険などの社会保険から給付を受ける場合、給付額が差し引かれててん補されるので注意してください。例えば傷害のケースで、損害額の合計が150万円の場合、支払われるのは最大でも法定限度額の120万円までです。もし、仮に社会保険からの給付額が40万円あったとすれば、120万円から40万円が差し引かれ、政府保障事業からのてん補額は80万円となります。
てん補金の請求方法と注意事項
てん補金の請求は、損害保険会社(組合)の窓口で受け付けています。保険代理店では受け付けていません。また請求できるのは、傷害と後遺障害の場合は被害者または被害者から委任を受けた人物で、未成年者に関しては親権者が請求権者となります。死亡のケースについては、被害者の配偶者や子、父母などの法定相続人および慰謝料請求権者です。
請求の際に必要な書類は、請求区分(傷害・後遺障害・死亡)や損害の範囲によって異なります。主な書類と作成者、発行者は以下のようになっています。
■請求に必要な書類と、作成・発行者| 書類名 | 作成者・発行者 |
|---|---|
| 保障事業への損害のてん補請求書 | 請求者 |
| 請求者本人の印鑑登録証明書 | 市区町村 |
| 交通事故証明書 | 自動車安全運転センター |
| 事故発生状況報告書 | 原則として事故の当事者 |
| 振込依頼書 | 請求者 |
| 診断書 | 病院 |
| 診療報酬明細書 | 病院 |
| 通院交通費明細書 | 請求者 |
| 休業損害証明書 | 雇用主 |
請求権の時効は3年、過ぎると請求できなくなる
ただし、請求しても支払いの対象とならない場合があるので注意してください。例えば、時効により請求権が消滅している場合。傷害では事故発生日から3年、死亡は死亡日から3年で請求権は時効となります。後遺障害の場合は、医療行為を続けてもその効果が期待できない状態(症状固定)となった日から3年です。また、信号待ちで停車していた車に自ら追突したなど、被害者に100%の過失があるケースでは、支払いの対象となりません。
もう1つ念頭に置いておきたいのは、てん補額の算出やてん補金の支払い手続きには時間がかかるということ。請求してから実際にてん補金を受け取るまで、6カ月から1年以上かかるということを覚えておきましょう。
(※1)出典:平成27年版犯罪白書「2 交通犯罪の動向」(法務省)※本記事は2017年2月7日時点での情報です。
※上記は概要を説明したものです。引受保険会社により、商品名や補償内容等は異なりますので、ご契約にあたっては必ず「各社商品パンフレット」および「重要事項のご説明・契約概要のご説明・注意喚起情報のご説明」をあわせてご覧ください。
また、詳しくは「ご契約のしおり(普通保険約款・特約)」等をご用意していますので、取扱代理店または引受保険会社までご請求ください。ご不明な点につきましては、取扱代理店または引受保険会社までお問合わせください。
![]()
- ※自動車保険に加入中の方は保険証券・免許証を、未加入の方は車検証・免許証をご用意ください。
- ※現在の保険契約の満期日まで、1日以上90日未満の方が見積もり依頼の対象です。
- ※お取り扱いできない契約もございます。詳細はページ下部をご確認ください。
- ※法人・営業用はこちら/バイク保険はこちら
このページを読んだ人は次のページも読んでいます
「自賠責保険」と「任意保険」の違いと必要性を理解して正しく加入する
このページでは、「自賠責保険」と「任意保険」の違いを、「加入義務」「補償内容」「サービス」「保険料の仕組み」の4つの観点から詳しく解説していきます。自動車を初めて手に入れた人、今まで深く考えずに任意保険に加入してきた人は、ぜひじっくりと読んでみてください。自賠責保険に加えて、なぜ任意保険に加入しなければならないのかを、しっかりと理解できるはずです。また、任意保険の保険料の節約法も紹介しているのであわせてチェックしておきましょう。
続きを読む
自賠責保険(共済)とは?加入方法・補償内容・保険料についてわかりやすく解説
「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」は、すべての自動車に対し、法律で加入が義務付けられている保険です。しかし、初めて自動車を持った人はもちろん、ベテランドライバーでも、自賠責保険の重要性を理解しきれている方は少ないかもしれません。このページでは、役割から補償内容、加入方法に保険料、そして万が一のときの保険金の請求方法まで、自賠責保険に関する基礎知識を余さず解説していきます。自賠責保険について理解することは、ドライバーにとってリスク管理の最低条件ともいえます。じっくりと読んでおきましょう。
続きを読む
自動車保険とは?役割・種類・補償内容について知る
初めて自分で加入する人にとって、自動車保険の仕組みはなかなかに難解なものです。もしかすると、「よくわからないから適当に加入してしまおう」などと考えている人もいるかもしれません。しかし、自動車保険は万が一の事故の際の経済的な負担を、保険金でカバーしてくれるとても重要なもの。しっかりと理解し、自分の目で選ぶことが大切です。
このページでは、初めて自動車保険に加入する人にもわかりやすいよう、自動車保険の役割から種類、補償内容まで、1つずつ丁寧に解説していきます。ぜひチェックしてください。
自動車保険の保険料相場は年齢・車両保険・車種でどう変わる?独自データで徹底調査
「自分の自動車保険の保険料が高すぎるのでは?」「ほかの人の自動車保険の保険料はもっと安いのでは?」などと思ったことはないでしょうか。そこでこのページでは自動車保険の保険料の相場について調べていきます。また、自分にとって最適な自動車保険の保険料相場を知る具体的な方法も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
続きを読む
自動車共済とは|特徴や自動車保険との違いを解説
万が一、自動車事故を起こしたときの備えとして、「自動車保険」以外にも「自動車共済」という選択肢があります。「自動車共済は掛け金が割安」といわれることもありますが、自動車保険と何が違うのでしょうか。自動車共済の概要についてご紹介した上で、自動車保険との違いやメリット・デメリットなどについて、取り上げていきます。
続きを読む















